
式典マスター・スミスが、心理カウンセラーの資格を持つ執事として、「聞く」という仕事について語ります。武骨な男の、意外に静かな一面が覗く一篇です。

スミスでございます。
私は式典の統括を生業としておりますが、実はもう一つ、心理カウンセラーの資格を持っております。今日は、その「聞く」という仕事についてお話しいたします。
意外に思われるかもしれません。式典の現場で人を采配している男が、静かに人の話を聞く。しかし私は、この二つは根っこでつながっていると考えております。
式典で全体を見渡す目は、一人のお客様の表情の変化を見逃さない目でもあります。ご主人様の中には、華やかな席では決して見せない、静かな疲れや寂しさを抱えていらっしゃる方がおられます。そういうものは、大きな声では語られません。ふとした沈黙、目線の落ちる方向、言葉と言葉の間――そこに、本当のお気持ちが滲むのでございます。
カウンセラーとして学んだことのうち、最も大切なのは「口を挟まぬこと」でございました。人は、助言を求めているようでいて、実はただ聞いてほしいだけのことが多い。ですから私は、答えを急ぎません。相槌を打ち、間を待ち、相手が言葉を探しているときは、じっとその時間を守る。武骨な私にとっては、これがなかなかどうして難しい修行でございました。何か言いたくなるのを、ぐっとこらえるのでございます。
誠実で、気を使わずに話せる――ありがたいことに、そう言っていただけることがございます。かしこまった席を仕切る男が、普段は肩の力を抜いて話せる相手でもある。その二面性を、私は自分の持ち味だと思っております。
愚痴でも、悩みでも、他愛のない世間話でも構いません。執事は、聞くことも仕事のうちでございます。また、お会いしましょう。

スミス
グループオブチェインバー
数々の公式行事を取り仕切ってきた、協会随一の式典マスター。格式ある場のすべてを知る。

