
副頭取・執事の椎名が、後進を育てるということについて綴ります。叱るのではなく、良いところを見つけて伸ばす。女性執事のパイオニアが大切にしてきた指導の心です。

皆様、ご機嫌麗しゅう。執事の椎名でございます。副頭取として、私の日々の務めの多くは、後進を育てることに費やされております。今日は、その「人を育てる」ということについて、少しばかり綴らせていただきます。
執事の技は、一朝一夕には身につきません。所作、言葉遣い、気配り、そして何より、目の前の方の心を読む力。これらは、教科書を読むだけでは決して育たないものでございます。ですから、人が育つには、必ず「支える誰か」が要るのでございます。
忘れられない出来事がございます。ある新人の執事が、初めての単独接客で、失敗を重ねてしまったことがありました。本人は、すっかり自信をなくしておりました。私は、その失敗を一つひとつ責めることもできました。けれど、それをしても、この子は縮こまるばかりだろうと思ったのでございます。ですから私は、こう声をかけました。「まず、あなたの良いところを三つ教えてあげる」と。
人は不思議なもので、良いところを認められて初めて、自分の欠点を素直に見つめられるようになります。頭ごなしに欠点を突きつけられれば、心の扉を閉ざしてしまう。けれど「あなたには、こんな良いところがある。だからこそ、ここを直せばもっと良くなる」――そう伝えれば、人は前を向けるのでございます。その新人はのちに協会の主力へと育ち、今でも折に触れて「あの一言がなければ辞めていました」と言ってくれます。
女性だからこそできる、執事の新しいかたちがある――これは私の信条でございます。凛として、しなやかに。厳しさだけでも、優しさだけでも、人は育ちません。その二つの間合いを計ることこそ、育てる者の務めだと、私は思っております。

椎名
ハウススチュワード+副頭取
協会の副頭取として、組織を支える女性執事のパイオニア。緻密なマネジメントと温かい指導力で、次世代を育てる。


